2015年9月20日日曜日

時 つまびらかにせず。ただし平成―――長月。
所 越前、美濃、近江の境。朝霧たちこめる深山。
登場人物 大見之丞桃六(岳人)。
 女の童(夜叉姫の待女 薄、萩、桔梗)
 
三国岳の麓より歩む。見上げる桂の大木。所作に従い鳥居をくぐる。
並びに樹立の梢を見ゆ。正面おなじ森々たる樹木の梢。滔滔たる水の流れ。
女童三人――合唱――
ここはどこの細道じゃ、細道じゃ、
天神様の細道じゃ、細道じゃ
大見之丞桃六 「水は美しい。いつ見ても・・・美しいな。」
その水の岸に柏葉白熊が咲くを見ゆ。やがて左手に夜叉滝の水音を聞ゆ。
沢を渡渉すること数度、急な尾根に取り着く。樹であって樹でなしとされた橅が左右に現る。積年の不遇の境地にいずれも枝葉を捩って天に指し扇いでいる。
 ツリフネソウを意識したのは夜叉が池にいたる川沿いだったように思う。花の形がおもしろくて、愛らしくて、造形の妙を感じた。ありふれた花だけれど、お尻のくるくるした所に蜜があり、その蜜を吸えるのはマルハナバチなどごくごく限られているようです。大見でも見られます。